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アート ハミングバード

花のまわりを飛ぶハミングバードのように、アートのまわりを飛び回ります。

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二つの美術館でブリュターニュ:ブリュターニュの光と風」展 SONPO美術館

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SOMPO美術館

 フランスの北西部のブリュターニュ地方をテーマにした展覧会が西洋美術館とSONPO美術館で開かれています。両方とも会期は611日(日)までです。

 西洋美術館では「憧憬の地 ブリュターニュ」と題し、サブタイトル「モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」、ブリュターニュに憧れて他の場所からやって来た画家の作品を展示しています。

 SOPMPO美術館では地元画家による風景画や風俗画が出展の半分以上を占め、ほとんどの作品は地元のカンペール美術館の所蔵です。ゴーギャン、モネを含む45作家による約70点の油彩・版画・素描が展示されています。

 

■厳しい自然と暮らし

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アルファベット・ギユ《さらば!》 1892年 カンペール美術館

 険しい断崖が連なる海岸線、荒涼とした風景、ケルト人たちが築いた地域はフランス語が通じない貧しい辺境の地と思われていました。「Ⅰ章 ブリュターニュの風景-豊穣な海と大地」と題し、風景と風俗が中心です。19世紀になって文学者や画家が異郷の地として注目するのは、19世紀になってからです。

遭難した船で亡くなった息子に分かれのキスをする父親、縦が1mくらいの大画面に描かれた荒波は迫力満点です。

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アドルフ・ルルー《ブリュターニュの婚礼》 1863年 カンペール美術館

 村の広場に集まって踊る男女、どのカップルの婚礼なのでしょうか。ブリューゲルが描く婚礼の作品を思い出しました。

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リュシアン・レヴィ=デュルメール《パンマールの聖母》 1896年 カンペール美術館

 美術館の外壁に拡大されていましたが、実物は小さくA4くらい、背景には海岸のごつごつした岩場が続いています。祝福のポースをとるイエスと聖母は正面をまっすぐに見つめ、聖母の顔の周りには光が細い線で放射状に散っています。静かで強い信仰を感じました。彫り込んだ装飾がある額縁には作者名も刻んでありました。


 18歳のモネが描いた風景画

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クロード・モネ《ルエルの眺め》1858年 丸沼芸術の森(埼玉県立近代美術館に寄託)

 「Ⅱ章 ブリュターニュに集う画家たち-印象派からナビ派へ」には、モネ、ブーダン、ゴーギャン、ベルナール、セリジュ、ドニ、ボナールが登場します。 

18歳のモネがブーダンに勧められて、戸外で描いた初期の風景画です。明るい日差しを受けた緑の木々、草原、川辺で釣り糸を垂れる人物、流れる雲、素敵な絵です。この展覧会で出会えるとは思っていなかったので、ラッキーでした。ルエルは川の名前、ブリュターニュに近いノルマンディーにあります。

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ウジェーヌ・ブーダン《ノルマンディーの風景》 185457年 丸沼芸術の森(埼玉県立近代美術館に寄託)

 こちらはブーダンの作品、上記のモネの作品と同じ場所を違う方向から見ているように見えます。壁の解説にも「モネによる油彩画との類似性から、本作に描かれるのはルエルの景観だと考えられている」とありました。

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ポール・ゴーギャン《ブリュターニュの子供》 1889年 福島県立美術館

 水彩とパステルで描かれ、人物に描かれた黒い輪郭はゴーギャンの総合主義を展開する途中を示しています。ゴーギャンは小村ポン=タヴァンでベルナールやセリジュと出会い、ポン=タヴェン派が誕生しました。

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「Ⅲ章 新たな眼差し-多様な表現の探求」展示風景

 ポール・ゴーギャン《アリスカンの並木路、アルル》 1888年、フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》 1888年は、最後のスペースに常設展示されています。

 写真は会場で撮影が許可されているものです。


 【画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉 ブルターニュの光と風】

2023.03.25(土)- 06.11(日)

 SOMPO美術館 SOMPO美術館(新宿駅 徒歩5分)|この街には《ひまわり》がある。 (sompo-museum.org)


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「自然という書物 15~19世紀のナチュラルヒストリー&アート」展は5月21日(日)まで

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版画専門の美術館「町田市立国際版画美術館」では200冊の書物で植物がどう描かれてきたのかを探る展覧会が開かれています。大小200冊の書物で500年の時を遡ります。

版画の発明と流布は現代では想像できない迅速な情報伝達であったと思います。

 

■植物を薬や産業のために研究する

写真のようにリアルに描いたり、鑑賞の対象としてではなく、植物の種の特定ができるように描き、葉や花だけではなく、根まで描きます。

植物の研修者本人が植物を描くことも多いのです。よりよく観察・研究する、描くはイコールでもあるようです。

 

500年は植物画以外の歴史でもある

植物を「より細かく、より正確に、より美しく」描くために、版画の技術はより細かく、繊細に発達(木版、銅販、石版)しました。また、植物をよりよく見るための機器(顕微鏡、双眼鏡)も発明しました。

持ち上げることもできないような重くて大きな本、持ち運んで利用するための小さな本など用途も多様です。

 

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パンフレットの作品は19世紀「フローラの神殿」の1

 

■4つの章を紹介

 第一章 想像と現実のあわい ―1516世紀

中世ヨーロッパのキリスト教では自然も父なる神の創造物でした。                              

 

第二章 もっと近くで、さらに遠くへ ―1718世紀

「大航海時代」によって新たな植物などがもたらされ、望遠鏡や顕微鏡の発明による見方も変化します。

イギリスのフックは顕微鏡を設計・製作してミクロの世界を描きました。

 

第三章 世界を分け、腑分け、分け入る ―1819世紀

18世紀は動植物の分類の基礎ができ、観測器具の発明、探検家の世界周航などで植物を取り巻く世界が広がりました。リンネ、ダーウィンが描いた書物もあります。

 

第四章 デザイン、ピクチャレスク、ファンタジー

年代区分の枠を超えて、3つのポイントに注目し、ミュシャやターナーなど著名な画家やグリーナウェイのかわいらしい妖精たちの絵画も登場します。

自然の造形を活かした「デザイン」、自然を絵画的に表現する「ピクチャレスク」、自然を霊感源とした「ファンタジー」

  

外にで出ると、本物の植物、本物の自然がいっぱいです。

 

自然という書物 1519世紀のナチュラルヒストリー&アート

前期 2023318日(土)~416日(日)  後期 418日(火)~521日(日)

町田市立国際版画美術館(東京都町田市原田町4-28-1

http://hanga-museum.jp/exhibition/schedule/2023-516

 

展覧会レビュー自然を捉えてきた500年の歴史を書物200点からたどる「自然という書物」展 | [楽活]rakukatsu - 日々楽シイ生活ヲ


国立西洋美術館リニューアルオープン  

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美術館正面と、通りの花籠        

1959年に開館した国立西洋美術館は、2020年10月19日からおよそ1年半の工事を経て2022年4月9日にリニューアルオープンしました。常設展では、19世紀ホールの1階部分が無料になり、スロープを上がる手前にチケットのチェックがあります。新収蔵作品や初めて見る所蔵作品もありました。

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前庭には植え込みが減り、ロダン彫刻も移動

大きく変ったのは、前庭です。植栽はロダン《地獄の門》のまわりだけになり、ロダン《考える人》《カレーの市民》の位置が変りました。2016年に本館と前庭を含む敷地がユネスコの世界文化遺産に登録され、地下の企画展示室の屋根(前庭)の防水を直す折に、ル・コルビュジエ設計当時に可能な限り戻すことになったからです。

前庭を走る直線の目地ル・コルビュジエのデザインなので資料に基づいて位置を直しました。西門から《地獄の門》に向う太い目地は途中で入口に向っています。シンプルな庭は植え込みの木陰がなく、夏には照り返しが厳しく感じられます。

■リニューアル記念の「自然と人のダイアローグ」展
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リニューアルオープン記念展覧会のチラシ

記念の展示は6月4日開幕の「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」です。
ドイツの西部エッセン州のフォルクヴァング美術館の協力を得て開かれました。19~20世紀にかけての100点を超える作品を4つの章に分け、自然に対する感性とさまざまな表現を展開しました

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企画展示室の壁に代表作、フリードリヒ、モネ、カッレラ、ゴッホ、リヒター

フォルクヴァング美術館と国立西洋美術館は、同時代の個人コレクションをもとにできた美術館です。コレクターはカール、エルンスト・オストハウス(1874-1921)と松方幸次郎(1866-1950)です。

■企画展に常設作品
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ジョアン・ミロ《絵画》1953年(絵葉書)

企画展には常設展のおなじみの作品、久しぶりの作品がありました。

ミロ《絵画》は天井が高い最後の部屋の白っぽい壁に掛っています。企画展では濃紺の壁の少し狭いところで照明が全体を照らしていました。《絵画》は色が濃く生き生きとして見えました。

左下の黒いものは書道の大筆で力を込めた引いた線、まわりには墨が飛び散っているようです。グレーの背景は刺繍模様のように繊細で、青い丸は透けるように薄く、赤と黒の丸はべったりと塗り込めているように見えました。

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ギュスターヴ・モロー《聖女チェチリア》1885~90年頃、《聖なる像(ペリ)》1882年 水彩(絵葉書)

モローの水彩は、保存のため、あまり見る機会がない作品です。細い線と淡く美しい色彩をじっくりと眺めました。

1年半の工事を経て、4月9日に再開、リニューアルオープン記念展は6月4日から開催されましたが、コロナウイルス感染拡大のため、訪れたのは会期末の9月6日になりました。日時指定予約なのに来観者は多く、ミュージアム・ショップやレストランは行列でした。企画展で一部を除いて写真撮影ができることに驚き、たくさん撮影しました。


国立西洋美術館nmwa.go.jp
常設展示 2022年4月9日から
企画展「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」(6月4日〜9月11日)
小企画展「調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより」(4月9日〜9月19日)
「新収蔵版画コレクション展」が(4月9日〜5月22日)

ふっくらボテロのユーモアとクリティカル:「ボテロ展 ふくよかな魔法」

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渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで「ボテロ展 ふくよかな魔法」が開かれています。南米コロンビア出身の美術家、フェルナンド・ボテロ(1932~)の生誕90年を記念してボテロ自身が監修し、初期から近年の作品、油彩、水彩、素描など70点が展示されています。
ザ・ミュージアムの壁に作品17点が看板になっています。人物、果物、花、楽器がふくらんだ形で描かれています。

■彫刻にもボリューム感
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ボテロ《小さな鳥》 1988年 ブロンズ 広島市現代美術館

地下1階のテラスには、《小さな鳥》が展覧会開催中に限り展示されています。「ふくよかな」ボリュームを実感できます(広島市現代美術館は2023年3月まで改修工事のため休館中)。
山梨県立美術館の庭にも《リトル・バード》(ブロンズ 1988年 130×126×124cm、タイトルは英語のカタカナ読み)が展示してあり、私がボテロ彫刻に初めて出会った作品でした。
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2017.8.30撮影
ボテロ《横たわる人物》埼玉県立近代美術館 ブロンズ 1984年 120.0×227.5×157.5cm


埼玉県立近代美術館にもボテロ彫刻があり、よく見ると右手でりんごを握っています。後ろ姿は前姿よりもボリュームがあり、大きなソファーのイメージです。

ボテロの出身地メデジンの街にはボテロの野外彫刻がいくつも設置され、「ボテロ通り」「ボテロ広場」もあり、2000年には、「ボテロ美術館」も誕生しました。

■モナ・リザで注目を集める
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撮影コーナー
フェルナンド・ボテロ《モナ・リザの横顔》2020年 油彩/カンヴァス 136x100cm


ボテロが注目されたのは、1963年にニューヨークのメトロポリタン美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》が展示されたときに、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のホールに《12歳のモナ・リザ》(ここでは出展なし)が展示されたことです。

今回展示された《モナ・リザの横顔》は世界で初公開です。腕は正面で顔と体は横向き、でも、この作品はひと目見てでダ・ヴィンチ《モナ・リザ》を思い浮かべることができます。似ているけれども摸写ではなく、「同じものを違う方法」で描くのがボテロです。

■聖母の涙
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フェルナンド・ボテロ《コロンビアの聖母》1992年 油彩/カンヴァス 230x192cm

ボテロの作品のテーマのひとつに宗教があり、メデジンでは高い地位あった宗教関係者を風刺とユーモアで描きました。この聖母は右手に青りんごを持ち、左手でかかえた少年(イエス?)はコロンビアの国旗を掲げています。聖母は宝石を飾った王冠を被り、おきまりの赤い服と青いマントではなく、黄色いドレス姿、両頬には大粒の涙があります。

■名画の主人公も豊満になる
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ボテロ《ピエロ・デラ・フランチェスカにならって(2点組)》1998年 油彩/カンヴァス 204x177cm

ボテロはスペイン・マドリッドのサン・フェルナンド美術学校で学び、イタリア・フィレンツェでフレスコ技法等を研究し、美術史における偉大な芸術家たちをオマージュする作品も描いています。訪問時には「6章 変容する名画」の撮影をすることができました。画面全体に人物が大きく描かれて迫力があります。

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左:ボテロ《アルノルフィーニ夫妻(ファン・エイクにならって)》2006年 油彩/カンヴァス 205x165cm
右:ボテロ《ルーベンスと妻》2005年 油彩/カンヴァス 205x173cm


■ここにも「ふっくら」
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ボテロふっくらシール

ほかにも果物や楽器を描いた静物画、サーカスなどラテンアメリカの暮らしを描いた作品があります。また、ふっくらしたさまざまなボテログッズもかわいくて迷ってしまいます。

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出口の足跡もボテロ風に

会場内の撮影は許可された場所のみ(日によって場所が違うようです)

【ボテロ展 ふくよかな魔法 BOTERO – MAGIC IN FULL FORM】
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_botero/

2022年4月29日(金・祝)〜2022年7月3日(日)  Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷)
2022年7月16日(土)~9月25日(日) 名古屋市美術館
2022年10月8日(土)~12月11日(日) 京都市京セラ美術館

ボテロ人生の傑作ドキュメンタリーも上映中です。『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』(2018年、82分)が、Bunkamuraル・シネマにて、2022年4月29日(金・祝)からロードショー、全国順次開催。
https://botero-movie.com/

おすすめ:スペイン語圏の美術を伝えるYoutubuで、2020年秋のマドリードのボテロ展とボテロ自身を紹介
【コロンビア🇨🇴美術】ボテロの世界・マドリード特別展【#094】 - YouTube

二人のアンリ、北のシダネルと南のマルタン:シダネルとマルタン展 最後の印象派、二大巨匠

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SOMPO美術館

「最後の印象派」とも呼ばれるフランスの画家、アンリ・ル・シダネル(1862-1939)とアンリ・マルタン(1860-1943)の展覧会に行きました。シダネルは北フランスの柔らかい光、マルタンは南フランスの強い光のもとで描きました。展覧会では9つの章に分かれた二人の作品を見くらべながら、二人の共通点と違いを考えました。

■どちらのアンリが描いたの?
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左:シダネル《ジュルブロワ、青い食卓》1923年 シンガー・ラーレン美術館
右:マルタン《窓際のテラス》1925年 ギャルリー・アレキシー・ベンシェフ


2歳違いの二人のアンリは細かい筆致をていねいに重ねる印象派風の描き方です。よく似た作品の絵葉書を見つけました。どちらがシダネル?マルタン? 人がいないテーブルと椅子のある風景です。

「19世紀フランスの画家」、印象派展の年代を比べてみました。第8回印象派展の頃、二人とも20代後半でした。
印象派展 第1回1876年~第8回1886年
クロード・モネ          1840~1926年
フィンセント・ファン・ゴッホ  1853~1890年
アンリ・マルタン        1860~1943年
アンリ・ル・シダネル      1862~1939年
ポール・シニャック       1863~1935年

■バラの村・ジョルブロワ
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シダネル《ジェルブロワ、テラスの食卓》 1930年 油彩/カンヴァス 100×81 cm フランス、個人蔵  

屋根を照らす赤みを帯びた柔らかい夕日、テーブルにあたる少し冷たい日射し、特別なフレームに囲まれた1点は、全体が淡い紅の壁に掛っています。椅子は1脚、ワイングラスにはワインが半分、ここからはどんな物語が始まるのでしょう。静かな時間を一人で過ごすための贅沢な場面でしょうか。それともこれから親しい仲間が集まるのでしょうか。

シダネルが暮らす「ジュルブロワ」は、パリから北へ100キロの村、シダネルがバラを植えたことがきっけになって「バラの村」「フランスでもっとも美しい村のひとつ」として知られるようになりました。
同じSOMPO美術館で2011年に開催された「アンリ・ル・シダネル展 薔薇と光の画家」(2012.04.14~)- 07.01)でシダネルの世界に魅せられました。

■雨が煙るマルケロルのテラス
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マルタン《マルケロル、テラス》1910~20年頃、フランス、個人蔵

マルタンは南フランスのラバス ティド・デュ・ヴェールに別荘「マルケロル」を購入してアトリエを構えました。
「マルケロル」とはプロヴァンス語で「岩山の上の家」を意味する造語で、マルタンは家や庭に好みの風景をつくり出しました。マルタンは雨が降ると家のなかからテラスの眺めを描くのが好きだったそうです。雨に煙る風景、水に映る植木鉢、しとしとと雨音が聞えてくるようです。

■壁画家・マルタン
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左:マルタン 《二番草》 1910年 フランス、個人蔵
右:マルタン 《ガブリエルと無花果の木[エルベクール医師邸の食堂の装飾画のための習作]》 1911年 フランス、個人蔵 


左は林に長い影が伸びる午後、右は空と海、青い服の女性、影も青味を帯びています。右は個人宅の食堂の壁画の下絵、4画面構成のうちの1点で《田舎の昼食》の全体図です。
マルタンがパリ市庁舎、ソルボンヌ大学、トーゥルーズ市庁舎などの公共施設に壁画描いていたことを初めて知りました。公共施設の壁画を描くには、時代を代表する画家が選ばれますが、マルタンは12か所もの施設を手がけたのです。

■最後の印象派
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アンリ・マルタン 《腰掛ける少女》 1904年以前 油彩/カンヴァス 96.4×56.5 cm ランス美術館 

帰りに建物の看板を振り返ると、夕日を受けた銀色の壁が来たときと違って見えました。

シダネルとマルタンは生涯を通じて人気作家であり続け、フランス国内、ヨーロッパ、アメリカで何度も紹介されました。二人はフランス芸術家協会サロンで活躍し、1900年に新協会創設に加わり、中心的メンバーとして活躍、ともにアカデミー(学士院)の会員、シダネルはアカデミー会長にまで就任しました。没後は徐々に忘れられましたが、近年には少しずつ再評価されるようになりました。会場には、シダネルがマルタンにバラの村を案内するモノクロの動画が流れ、二人の姿を見ることもできました。

今回の作品の多くが「個人蔵」と記されているのは、各国コレクターの手元に置かれているからでしょう。部屋に飾って見たいと思う作品がたくさんありました。

【シダネルとマルタン展 最後の印象派、二大巨匠】
SOMPO美術館(新宿駅 徒歩5分)|この街には《ひまわり》がある。 (sompo-museum.org)
2022.03.26(土)~ 06.26(日)SOMPO美術館(東京・新宿)

2021年11月3日(水)〜2022年1月10日(月)山梨県立美術館
2021年09月11日~10月24日 ひろしま美術館
詳しい紹介があります:シダネルとマルタン展 - 特別コラム - [ひろしま美術館]
https://www.hiroshima-museum.jp/special/detail/202109_SidanerMartin_column.html

*会場内では4作品の撮影が許可されていました。

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art hummingbird

Author:art hummingbird
アート、本、映画を中心に
見たこと、感じたことを伝えていきます。

ハミングバードは蜂鳥のこと、
体長は約6センチ、
蜂のように羽を動かして、
空中に留まることもっできます。

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